アトピー性皮膚炎の治療目標
最新のアトピー性皮膚炎の治療ガイドラインに以下のように書かれています。ガイドラインというのは有名な複数の医師や研究者が集まり「その病気とはどういうものか、どのように治療するのが良いか、その方法にはどのようなものがあるか」などを議論し作られるものです。何年かごとに新しくなります。
そこの「治療」の項目の中には以下のように書かれています。
治療の最終目標(ゴール)は、症状がないか、あっても軽微で、日常生活に支障がなく、薬物療法もあまり必要としない 状態に到達し、それを維持することである。また、このレベルに到達しない場合にでも、症状が軽微ないし軽度で、日常生活に支障をきたすような急な悪化が起こらない状態を維持することを目標にする。
それに対して高名な皮膚科の先生が「上記の中で最も重要なのは『日常生活に支障がなく』である。アトピー性皮膚炎は完治させることができない慢性の炎症性疾患であるため、その目標はコントロールとなるが、アトピー性皮膚炎を気にすることなく、普通の日常生活が送れるくらいのコントロールを目指す」とコメントされていました。
これらを読んで私は違和感を覚えました。なぜならアトピー性皮膚炎を「完治させることができない疾患」とされているからです。アトピーの語源はギリシャ語で「場違いの」「奇妙な病気」という意味だそうです。だからこそ完治できないと認識されているのかもしれませんが、決して完治することができない疾患ではありません。
「完治はしません」と言われればとても残念に思われるでしょう。私は漢方薬をお出しするようになって「完治した」と考える方が何人かいらっしゃいます。(間違った私の思い込みかもしれませんが) ステロイド剤等の塗り薬がほとんど必要なくなった方はたくさんいらっしゃいます。これだけではもちろん完治ではないのかもしれませんが、状態はかなり良くなっていると思います。
先日「探偵ナイトスクープ」という関西人では知らない人はいないテレビ番組の中で、「30年以上使ってきた炊飯器を直して欲しい」という依頼がありました。メーカー等に問い合わせても、「古いので部品がない」という理由で買い替えを勧められたそうです。しかし依頼者のご家族は「この炊飯器で炊いたご飯を食べたい」というたっての願いです。そこで登場されたのが、三重県の山間部にお住いの「修理の神様」いわれる60歳台の男性でした。その方が炊飯器をみられて「できるだけのことをする」とのことで、いくつかのおかしくなっている部分を懸命に修理されました。「できるだけの修理はしたけれど実際ご飯が炊けるかはわからない」とおっしゃっておられましたが、依頼者がご自宅に持って帰られて試したところ、見事にご飯が炊きあがりました。
メーカーに言っても「修理は無理、新品を購入するしかない」と言われていた品物でも、見事に復活、依頼者のご家族はとても喜ばれました。私はこれを見てとても感動しました。
何を言いたいかと申しますと、あきらめてはそこですべてが終わってしまうということです。病気もあきらめてはいけないのです。もちろん私がすべての病気を治せることはできません。が、あきらめることはしないようにしています。世界のどこかに治す方法を知っている方がいるかもしれません。そうならばその方法を私が知りえることで、それを使って何とかして差し上げることができればと願っています。