医師と患者さんの治療目標の相違
医学雑誌で、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病)について書かれているものを読みました。この疾患は最近すごく増えていて、現在では1000人あたりで2-3人は罹患しているぐらいになっているそうです。なぜ増えているのかはわかっていません。
潰瘍性大腸炎やクローン病という病気は、主に腸に問題が起こり、そのために腹痛や下痢などの症状が起こります。それに対して治療をするわけですが、その時の目標が医師と患者さんとでは異なるようです。
医師は「内視鏡などで診て、腸の粘膜が正常に近くなっていること」を目標にしていることが多いようですが、それに対して患者さんの多くは「痛みや排便に伴うストレスなどの身体的苦痛の軽減、就学・就労など社会生活の達成など現実的な目標を重視する傾向にある」とのことです。
これは「ごもっとも」なことだと思います。患者さんは腸の状態が内視鏡でどのように見えようとも外からは全く見えませんし、普通に生活できればそれでいいのですから。
これはほかの病気にも言えることだと考えます。「検査値が正常範囲に入ったからいいでしょう」「血圧が下がったからいいでしょう」ではダメです。たとえ「検査値や血圧」が正常域になったとしても、その方が気持ちよく生活できていなければ道半ばです。「病気、病態」の治療の目標は、その方が「普通に生活していただけるようになる」さらに「普通の生活ができるだけ長く続けれれる」ことだと考えます。
「患者さんに寄り添う医療」「患者さんが満足される医療」をできるだけ実践したいと思います。