尿酸は悪者?(痛風ってどんな病気?)
「尿酸値が高いと痛風になる」という話をお聞きになられた方はたくさんいらっしゃるかもしれません。また「ビールや肉を食べ過ぎると尿酸値が上がって痛風になる」「痛風はぜいたく病」なんていう話をお聞きになった方も多いかもしれません。このように聞くと「尿酸は悪者」というイメージを抱かれると思います。
まず最初にお伝えしたいのは「尿酸値は食べるものに影響されることは少なく、つまりビールを飲み過ぎたから尿値が上がるというようなことはあまりない」ということがわかってきました。確かに尿酸をたくさん含む食材をたくさん食べる習慣のない方でも尿酸値が高い方がいらっしゃいますし、尿酸値が高い方が食事制限しても尿酸値はあまり変わらないという方にも出会います。生まれつきの体質、遺伝子の特徴が強く影響しているということが最新の研究でわかってきたそうです。そういえば尿酸値が極端に低い方にも出会います。
それでは本題に入ります。(今回も少々長いです)
公益財団法人「痛風・尿酸財団」のホームページの中に「尿酸は善玉?悪玉?」という記事が載っていました。この記事の結論は「尿酸研究は進化しているが、尿酸は善玉?悪玉?に関する結論は出ていない。」ということです。難しいことは私にはわかりませんが、「尿酸は酸化作用と抗酸化作用の両方を持ち合わせている」ということらしいです。決して「悪玉」と決めつけてはいけないようです。
老化すると体は酸化してくるとされています。言い換えると「酸化しない方がいつまでも若さを保てるということだ」と理解します。「抗酸化」とは「酸化に抗う」すなわち酸化しないようにするということです。尿酸はこの抗酸化作用を持っているそうです。
上記の記事の中にこのようなことが書かれていました。「検診受診者を対象に、血清尿酸値と酸化ストレス状況との関連性を調査したところ、血清尿酸値5-6mg/dlを超えると酸化ストレスが高値になることが明らかとなった(Kurajoh et al. Sci Rep. 2021;11:7378)」と。
この研究結果から「尿酸が増加傾向(正常値は7mg/dl)になると酸化ストレスが増えるようになる」ということのようですが、そうなんでしょうか。このように読み換えることはできないでしょうか。「(何らかの理由で)酸化ストレスが増えてきた場合、尿酸値が5-6mg/dlを超えてくることが多い」と。つまり酸化ストレスが増えたために、それを抑えようとして尿酸値が上がっていると解釈できないでしょうか。もっともまだ私には、酸化ストレスが増える原因がわからないですが。
そういう風に解釈したうえで「痛風」といわれる病気について考えてみます。
痛風という病気は、「急に関節が真っ赤に腫れて痛む」という特徴があります。「痛風」の語源は「風が当たっただけでも痛む」というところにあると聞いたことがあります。足の親指の付け根の関節が腫れることが代表的ですが、それ以外の関節が腫れることもあります。その方が検診などで尿酸値の高値を指摘されていた場合「痛風(発作)」と診断されるのが一般的です。私も以前はそのような患者さんに出会った場合「これは痛風(発作)」です」と申し上げたことが幾度かありました。
その際は痛み止めを服用していただいたり、湿布を貼って痛みを軽減するような治療をし、そのうちに痛みがなくなるのを待っていただくようにしていました。そのような中で私は研修医時代に教授の先生に教えいていただいたことがありました。それは「痛風発作を起こしている時期に尿酸を下げる薬を処方してはならない。なぜならば痛風発作をより悪化させるから」ということでした。若かりし頃にお教えいただいたことで私はそれを忠実に守ってきました。悪さをしている尿酸を少しでも早く減らした方がいいようにも思いながら、「なぜ、この時期に尿酸値を下げると悪化するのだろうか」と不思議に思うこともなく、「そういうものなんだ」と思っていました。
最近の私は痛風発作様の関節の腫脹、発赤、痛みを訴えられる患者が来院された場合には、まずその部に刺絡をして、さらに反応する色、数字を調べて、その色のマジックで数字を描き、「熱をとる、痛みをとる、腫れをとる」ような漢方薬をお出しし、それでもまだ不十分な場合に鎮痛剤や湿布をお出しするというような対応をさせていただいています。現実には西洋薬の痛み止め、湿布をあまり必要としないケースが多いです。その1例として下記のページをご参照ください。
臨床経験を積んでいくと、尿酸値が高いことを一度も検診で指摘されたことがない方が、痛風発作(様)の痛みを訴える場面に遭遇したり、一方で検診で尿酸値が高いと指摘されていても放置したままでも、一度も痛風になったことがない方にお会いするようになりました。
このようなこともあり「尿酸値が高いから痛風発作(様)の痛みを訴えるのだろうか」と疑問に思うようになりました。
痛んでいる関節のところからたまっている液を注射器で抜くと、そこには尿酸結晶がたくさん貯まっていることがわかっています。このような事実から「痛風の原因は尿酸だ」とされていると思います。もし何らかの違う原因で痛風が起こり、それを少しでも早く改善させようとして尿酸がそこに集まってきて自己防衛をしている状態であると考えればどうでしょうか。例えれば土砂崩れが起こった場所に自衛隊の方々が復旧にあたっていただいているような状態で、自衛隊員の方を減らすようなことをすれば復旧が遅れますし、さらなる被害が出るかもしれません。
と考えると、上に書きました研修医のときに教えていただいた「痛風発作が起こっているときに尿酸を下げるお薬を出してはならない」という事実を説明できるように思います。
またこのようなことも経験しました。日頃尿酸値が正常範囲の方が「断食をしてみたい」とお申し出になられました。「動物は身体の調子が悪いときに断食をして治そうとする」ということを聞いたことがあったので「悪いことではない」と考えていましたので「どうぞやってみてください」とお答えしました。そうしますとその方は断食3日ぐらいした時点で、なんと正常範囲にあった尿酸値が13mg/dlぐらい(正常は7mg/dl以下)まで上昇したのです。びっくりしました。「断食をする」ということは「食物をとらない」ということですから身体としてはある意味危機的な状況になっていると思います。(もちろんこれは自分で作り出した危機ですが)生体が危機になると、その危機を乗り切ろうとして尿酸が体の中に増えてくると考えることができるかもしれません。
尿酸は悪玉なのでしょうか。それとも善玉なのでしょうか。これまでは「尿酸値が高いといろいろな悪影響があるので、尿酸値を下げる薬を飲みましょう」というのが当たり前のようになっていますが、もし善玉の要素が強ければ下げようとすることが良くないのかもしれません。「尿酸値を下げる薬を飲みだした際には肝機能障害が出やすいので注意するように」という教えもあります。(他の薬でもその可能性がないわけではないですが、尿酸を下げる薬ではその頻度は多いとされています。)下げようとすると変なことが起こりやすいのでしょうか。
少なくとも「『悪玉か善玉か結論が出ていない』というのが今最先端で研究されている方々のお考えである」ということを知りえたことはとても良かったですし、このことで今後みなさまに対しての対応も変わってくると思います。
もし尿酸が善玉だったら・・・
追記(2025.10.30)
昨日テレビを見ていたら「走ったときに疲れるのは『乳酸』が貯まったからではない」と有名な大学教授の先生がおっしゃっていました。1920年ごろに乳酸を初めて測定できるようになって、測ってみると「疲れると乳酸が増えている」ということに基づき、「乳酸が原因だ」となったようです。それが1世紀以上言い伝えられてきたのです。
あれ、なんか「尿酸」と似ている?
