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糖質制限食とは(糖尿病の食事療法)

[2019.01.23]

 最近新聞、テレビなどで「糖質制限」という言葉をよく見聞きします。その多くは芸能人などが減量を目的に語られているようですが、本来は「糖尿病の方の食事療法の一手段」であると思います。ただ、糖質制限を行うとあまり苦痛を伴うことなく体重が減少しやすいのも事実です。

 私が「糖質制限食」を知ったのは今から約10年前になります。当時私は江部康二先生のお兄様の江部洋一郎先生に漢方の大事な診察方法である「脈診(左右の腕の脈に触れて体の中の状態を推し測る診察方法)」についてお教えいただくために高雄病院へ通っていました。その頃は洋一郎先生、康二先生が「糖質制限食」とは言わず「縄文糖尿病食」と言われていたと記憶します。そういう風に命名されたのは、糖質の多くを占める穀物類が日本では2000年前の弥生時代に始まったとされ、それ以前の縄文時代には穀物を日本人が食べることがなかったためだとお聞きしました。

 その後江部康二先生が中心となられ糖尿病の方に対しての「糖質制限食の勧め」が発展し今日に至っています。これまでも健康に関する数々の食事療法がブームになりましたが、それらのほとんどはしばらくすると消えてなくなりましたが、「糖質制限食」に関するブームはますます大きくなっています。このことは、この食事療法に間違いはなく正しいからであり、その効果をみなさまが認めていらっしゃるからだと思います。

 どのような方が糖質制限食を実施すれば効果があるのかということですが、簡単にいえば腎臓や肝臓が極端に悪い方以外、すべての人が実施されてもいいと思います。(その他特殊なご病気の方も実施しないほうがよいですが、詳細はご相談いただければ幸いです)   病気でなく健康とされる方が取り入れられるのももちろんO.K.です。ますます健康になられるかもしれません。一方で「糖尿病の方がこの食事療法を必ず取り入れなければいけないか」といいますと、もちろん取り入れられれば血糖値が速やかに低下傾向になり、必要とするお薬が減り(ときには不必要にもなる)、糖尿病の状態は改善傾向を示すと思います。しかし、原則糖質(炭水化物)を食べないという制限された食生活を、非常にストレスとして受けとられる方もいらっしゃるわけです。一方ガチガチの糖質制限食を続けられても、人生はいつか最期を迎え、それは避けられないことです。そこへいくまでの過程をどのようにされたいかということです。どのような食事をするかという選択権は絶えずみなさまがお持ちです。江部先生がよくおっしゃいますが、「糖尿病の患者さんに対してこのような食事療法もありますよ」というお話だけは医療者としてお話しさせていただかなければならないと思います。この方法を頭ごなしに否定するというのはもってのほかです。また「この方法の安全性は確立されていないのでダメだ」とかいわれる医療者の方もおられますが、これまで糖尿病の方に推奨されてきた「カロリー制限食」も安全性に対してははっきりとしていないです。

 江部先生のブログを拝見させていただいていつも感じることがあります。それは糖質制限食の理論には絶えず筋が通っていることです。正しい生理学的事実や歴史的事実に基づいて展開され、そのための情報収集、理論の構築に費やすご努力は並大抵のことではないと思います。私はそれらの情報をお教えいただくことにより、医師として正しい情報を患者さんにお話する伝達役であると考え、日常診療しております。

 最近の1例をご紹介します。人工透析中に腎移植を受け、幸いに透析から離脱できた方が来院されました。免疫抑制のためにステロイド剤を服用する必要があり、それに伴う血糖値が上昇し、某大学病院の糖尿病専門医の診察を受けられてからの来院でした、SU剤をはじめとする内服薬を処方された上で、インスリン導入のための入院予約をされた時期で、ヘモグロビンA1c 9.1%でした。とある機会に糖質制限食をお知りになられたようで、ご自身の意思で厳格な糖質制限食を導入されていました。そのため低血糖の危険性を考え、初診時より投薬はすべて中止していただきました。幸い大学病院への入院の延期を了承していただけましたで、糖質制限を継続しつつ1ヵ月半経過した時点で、ヘモグロビンA1cを測定したところ、なんと5.8%まで低下しており、ご自身も私もびっくり仰天でした。たとえステロイド剤を服用していても、糖質制限食で血糖上昇を抑えることができた、私にとっても意味深い経験となりました。

 最後に、今まで医学的に正しいとされていたことでも、時間が経過して否定されることがときにあります。「膵臓のβ細胞は死んでしまうと生き返らない」という考えが定説とされていますが、β細胞を造る遺伝子まで死んでおらず眠っているような状態であるとするならば、それを目覚めさせることができたなら糖尿病患者さんにこれ以上の福音はないと思います。「ひょっとしたらそれが可能になる方法があるのではないか」と探し続けながら診療し、「その方法を見つけたかもしれない」と感じている今日この頃です。

 

 

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