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「お薬減らすことできませんか?」(必要な薬、不必要な薬(?))

[2023.05.16]

 お薬を飲むことが漢方薬、西洋薬を問わず必要とされる時はあります。が、飲んでいたお薬が必要でなくなる時もあります。また薬の種類によっては「飲まなくても良い」と思われるときもあると感じています。

 

 血圧のお薬など同じお薬を長期にわたってお飲みになられている方に出会います。私も血圧のお薬を出し続けさせていただいている方もいらっしゃいますが、以前よりかなり減りました。その理由は「できるだけ血圧のお薬を減らすことができないか」と絶えず考えるようになったことと、「あまり血圧を下げ過ぎることはよくない」と考えるようになったことがあります。

 

 以前は「血圧の薬は一生お飲みいただくもの」と考えていました。なぜなら、中止すると血圧が上がると考えていたからです。しかし身体の状態が良い方向に向かえば血圧値も安定するはずで、なんとかお身体の状態を上向きすることを絶えず考えるようになり、それが達成できた場合には高めだった血圧値が下がってこられる場合に多くで出会うようになりました。漢方薬を以前よりは少なからず適切にお出しできるようになったことが原因と考えます。それ以外にも、理由は不明ですが血圧が下降傾向の方もあり、そのような場合は当然降圧剤は中止できます。中にはお薬を中止することに不安をお持ちになり、なかなか服用をやめていただけない方もありますが。

 

 何人かの方が、降圧薬を中止することによって「元気になった」「この頃身体が楽」と言っていただけました。そのような場合、お出しし続けていたことに対して申し訳ない気持ちになります。何かの理由で当院を受診された方が、降圧薬を服用され血圧が低めであった場合には私が処方していないこともあり、降圧薬の中止を提案しにくく悩むところです。

 

 また胃酸を押さえるお薬を長期に渡ってお飲みになられている方も多いようです。「お薬をたくさんお飲みになられて胃がやられると困るから」という場合もあるようです。胃薬にも何種類かありますが、私の印象では胃酸を抑える薬をお飲みになられているケースが多いようです。「胃薬をお出しする」と決定するのはわれわれ医師だと思うのですが、私は「お薬をたくさんお出しするので、胃が荒れても困るから胃薬を一緒にお飲みください」としてお出ししたことはこれまでの40年の経験では1回もありません。これが絶対正しいかどうかはわかりませんが。

 

 胃の中はPh1という強い酸性に保たれているのが普通で、このことによって食べ物を消化しやすくしたり、時には毒性のあるものの解毒をしています。しかし胃酸を押さえる薬を飲み続けるということは、当然胃の中のPhが3とか4になっている時間帯が増えます。そうすれば、おそらく食べ物の消化は悪くなると思われます。これがひいては胸やけや胃もたれに結びつくこともあるかもしれません。ひょっとしたら、他のお薬の効果も普通のPh1の胃の方が飲まれる場合と効果に違いが出てくるなんていうことはないでしょうか。

 

 良性の胃潰瘍でも、私が医者になった40年前頃には治らないので胃を切除しなくてはならない方がいらっしゃったと記憶しています。ところが上記の胃酸を抑えるお薬が出てきてからは、そのような方は皆無に近いぐらいいなくなり、薬の効果にびっくりしたものでした。そのため胃潰瘍ができてしまった方には私は必ず、上記のような胃酸を抑えるお薬をお出しします。ただし短期間、長くて8週間までです。なぜならば8週間もあれば大きな胃潰瘍でもほとんどきれいに治ってしまいます。このように素晴らしいお薬ですが、他のお薬をたくさん飲むからこのような薬を併せて飲むというのは少し違うと思います。

 

 ピロリ菌のことが話題になることもありますが、日本人の60歳以上の方では50-70%ぐらいの人が感染していることが判っています。ピロリ菌が感染している人は胃酸の分泌が低下していることもわかっており、つまりその方の胃内のPhはピロリ菌がいない普通の胃よりも高めになっているはずです。このような方が胃酸を抑えるお薬を飲めばますます胃酸の効果が少なくなってしまいます。これは問題だと思います。

 

 必要な薬は飲んでも、不必要なものは飲まない、それも必要な時だけというのが基本です。

 

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