ご挨拶
私は昭和58年(1983年)に医師となりました。それからいくつかの医療機関で診療に従事して現在に至っています。働き出してから20年近くたって、あることに気付きました。
日常診療において高血圧症や高コレステロール血症の方は、測定値の上では正常域を超えておられますので、お薬をお出ししてコントロールさせていただいていましたが、そのような方々は血圧が高い、コレステロール値が高いというだけで、それらが原因で起こすつらい症状はほとんどないのです。ところがそのような方が、肩こりがある、腰が痛い、手足が冷える、顔がほてる、便が出にくい、寝付きにくい、耳鳴りがするなど、血圧値やコレステロール値に関係がないと思われる様々な訴えをあわせてお持ちのことが多く、それらに困っておられる実情を訴えられるのです。しかし私はそのような方々に対して、自分はなにもできていないということに気付いたのです。
「何もできていないのはなぜなんだろう」と自問しましたところ、患者さんの訴えはさまざまで、その原因を探ろうとしても、血液検査やレントゲン検査などの一般的な検査では異常が見出せないことが多く、病名をつけることができないため、お薬の選択ができない場合が多いからであるとわかったのです。そのため「冷え症」「ほてり」「肩こり」「汗かき」などは西洋医学では病名として認められていないこともあり、見向きもされていないことがほとんどです。しかし、その状況を改善させてあげることができれば、その方の日常生活は少なからずとも快適になることと思います。
そのような中で、私は漢方薬をはじめとする東洋医学に出会いました。もう少し正確に言うならば、漢方薬の存在は知っていましたが、「そんな古いお薬なんか効くわけがない」と決め付けていましたので、みなさまにお出ししようと考えたこともありませんでした。今考えると、医師としてたいへん申し訳ないことをしていたと思います。
東洋医学には採血やレントゲンなどの検査はありませんが、詳細な問診や五感を使った診察方法があります。それらには2000年を超える歴史があり、脈脈と受け継がれた真実の世界がありました。その歴史の重大さには日々驚かされています。そして、最適な漢方薬をお出しすることができれば、お飲みいただいた直後からなんらかの改善がみられることが多く、その早さには驚くばかりです。
最近では、漢方薬以外にも身体の調子を整える多くの手段(鍼やそれ以外の様々な手法)を用いることも多く、それらも驚くような効果を示すような場合もあります。そしてそれらは嬉しいことに、あまり副作用の心配をすることなく実施できるのです。
話は少し変わりますが、英語をはじめとした外国語を勉強し始めたときには、それらの言語で話しかけられても何を言っているのか全く理解できません。しかし勉強を続けていけば、徐々に話しかけられている内容が理解できていきます。これと同じで、東洋医学の勉強を続けていけば、みなさまが困られている症状を訴えられたときに、西洋医学では「ちんぷんかんぷん」のことでも、東洋医学では簡単に説明をつけられる症状である場合があります。ですから東洋医学の勉強は外国語を勉強することと同じような感覚を持っています。
まだまだ勉強が不十分で、みなさま全員を良い方向へ向かっていただくようにできているとは思えません。しかし少しでも改善していただけるように絶えず努力し、「あきらめない医療」をめざしたいと思っています。
スタッフ一同、もしなにかお困りのことがあればご来院いただければ幸いです。何卒よろしくお願いいたします。
院長 蛭間 正人
略歴
1958年 | 大阪市生まれ |
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1983年 | 奈良県立医科大学医学部卒業 大阪市立大学第1内科学教室入局 |
1988年 | 大阪市立大学医学部大学院 修了 |
1988年 | 多根総合病院内科 勤務 |
1993年 |
浅香山病院内科 勤務 |
所属学会・資格
- 日本内科学会 総合内科専門医
- 日本東洋医学学会 所属
- 日本医師会認定産業医