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アトピー性皮膚炎について(漢方薬とステロイド軟こうの関係について)

[2019.03.01]

 私は皮膚科を専門にしているわけではありませんが、ときどき「アトピー性皮膚炎」をはじめとする慢性皮膚疾患の方が来院されます。多くの方はそれまでに塗り薬を処方されており、「それを塗っていると状態は良くなるけれど、中止すると悪くなる」とか、「塗っていても全然良くならない」といわれる方が多いです。

 

 なぜ、そうなるのでしょうか。塗り薬として主に使用されるのは「ステロイド軟こう」といわれるものです。それらはアトピー性皮膚炎にはとても効果的です。ですから、塗れば良くなるのです。ステロイド軟こうには強度にいくつかの種類がありますので、必要な強度のものを使用しなければ、よくならない場合もあります。

 

 ただし、適切な塗り薬を塗ったとしても、古い皮膚に代わってできてくる新しい皮膚に対しては効果はまったくありません。次に出てくる皮膚は、元の状態と同じような皮膚がでてくるはずですから、塗り薬を塗らなければまた悪くなるのです。  

 

 これを畑の作物にたとえて考えてみます。お百姓さんは、畑の作物の出来が悪いときには、必ずそれの植えつけられている土を改良しようとされると聞きます。それができれば、次には良い作物ができるようです。

 

 これと同じ様に考えると、今の身体の全体の状態(畑の土)が悪いから皮膚の状態(作物)も悪いと考えることができます。それでは、どうして身体の状態を変えるのでしょうか。私はそのために漢方薬をお出しします。西洋薬では、漢方薬ではできるような体質を変えることはできません。   

 

 体質を変えるというのは、たとえば「冷え」が強い方には温めるような漢方薬を処方し、逆に「ほてる」方には身体をさますようなお薬をお出しします。また、便通が悪い方には、いつもスムーズに排便がありおなかがいつもすっきりした状態になるようにします。それらが相まって効を奏し身体の基本的な状態が良くなれば、おのずと次に出てくる新しい皮膚は正常の皮膚が出てきます。そうなればかゆみはないわけで、ポリポリと掻かなくなります。「掻く」という行為は皮膚にとっては嬉しくない行為で、正常の皮膚を掻き続けると、正常の皮膚まで悪くなってしまいます。

 

 ですから、できるだけ掻かないようになっていただくことが大事と思っています。そのときに重要な役目をするのが、先に書きましたステロイド軟膏です。ステロイド剤はよく効きますので、塗るとかゆみはかなり抑えられますので、掻くという行為はかなり抑えられます。その結果、漢方薬が効果を発揮し出てきた新しい正常の皮膚は、掻くという行為から逃れることができます。ステロイド剤を使わなければ、元々の痒い皮膚を掻くときに、新しい皮膚まで一緒に掻かれることによりそれまでダメになってしまいます。

 

 ただしステロイド剤を使っていただくのは初期の時期だけと考えており、それもそれほど大量に使用していただくつもりはありません。

 

 ときに「ステロイド剤は使いたくない」とかたくなに拒否される方もいらっしゃいますが、このようなケースではなかなかうまくいきかないことを経験します。世間で、ステロイド剤が悪く思われている最大の原因は、長く使い続けることによる副作用(皮膚が赤くなる、皮膚が薄くなるなど)のためかと思いますが、短期間使用するにはとても良い薬だと私は考えています。

 

 アトピー性皮膚炎の方にとって漢方薬とステロイド剤の関係を例えるなら、以下のようだと考えています。

 

 屋根に穴の開いた家に住んでいるときに台風が来たときを考えてください。そのときに家の中はどうなるでしょうか。部屋の中は水浸しになり、とてもそのままでは暮らせません。ですからみなさまは部屋の掃除をされると思います。一方で、再び雨が降ったときに水浸しにならないように屋根の修理をすることでしょう。この一旦悪くなった部屋の掃除をする役目をステロイド軟こうが行い、屋根の修理を漢方薬が行っているとお考えいただければ理解していただきやすいと思います。

 

 最後に、たとえ長く続いたアトピー性皮膚炎でも、漢方薬を飲みだして2-3日で皮膚の状態が変わってきたことを自覚していただくことが多いことに驚きます。それほど人間の身体は、すこし方向を変えてあげることができればいい方向へ向くのだと考えています。 

 

                        

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