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これは私の話です(突然の悪寒、腹満、腹痛);葛根湯医者

[2024.12.11]

 先日、夜診終了時に「なにかお腹(特に上腹部)が少し張った感じがあるなあ」と思いました。日頃食欲旺盛である私が「あまり夕食を食べたくない」という、10年以上なかった感じでした。

 

 その後お腹の張った感じが増強し、とても食べられる状況ではなくなっていました。便はその日もある程度出ていた中で、その時点で少し排便があったために腹満感は少し軽減しましたが、「もう寝よう」と思いその前に入浴しました。すると入浴中に悪寒を認めるようになり、入浴後に歯磨きをした際には、コップに水を入れるのが困るぐらい、またうがいをするためにコップを口に持っていくのも難しいぐらい悪寒が強くなりました。

 

 この時自分の状態を観察しましたが、腹痛はなくお腹が張っている感じだけで咳、鼻水、のどの痛み、関節痛などもなくただただ悪寒が強かったです。それ以外には首筋が少し凝っている感じがありました。片足でケンケンをしてみましたが腹痛が起こることなく、「お腹の状態はそれほど厳しいものではない」と判断しました。

 

 そこで葛根湯を2包まとめて熱いお湯に溶いてのみ、蒲団に入ることにしました。その際悪寒が強いために日頃まだ半そでのTシャツで寝ている私が下着のシャツの上に上下のスエットを着て、おまけに靴下をはいて、カイロをお腹と背中に張りました。

 

 葛根湯を選んだ理由は「悪寒があったこと、首筋が凝っていたこと」の二つです。

 

 約2時間ぐらいで寒気は徐々になくなってきましたが、上腹部の張った感じは増強し、唾液を飲みこもうとしても食道に貯まった感じで、ここ40年間は一度も嘔吐したことない私が嘔吐しそうになりびっくりしました。その際少しすっぱい感じが口の中にありました。多分胃液が食道まで上がってきていたのだと思います。

 

 こういう状況がさらに2時間ぐらい続きましたが、葛根湯の効果が出てきたのか、腹満感も徐々に軽減し、唾液も飲み込めるようになってきました。

 

 いったいなにが起こっていたのでしょうか。私の考えは以下の通りです。

 

 胃と十二指腸の間の幽門といわれる部位が何らかの機序で狭くなってしまい、そのため胃が大きく張ってきて、挙句の果てには食道まで影響を出たのではないかと考えます。もし十二指腸の奥の方で狭くなったいれば胆汁が逆流してきて、口の中が苦くなるはずですので、幽門部の一時的な狭窄と考えたのです。このような疾患は西洋医学的にはあまり聞いたことがありません。

 

 すごい悪寒があったので、東洋医学的には外からウイルスなどが入ってきて起こった状況だと考えますが、少なくともコロナやインフルエンザの検査は陰性でした。そのためそれらのウイルスの影響ではないと思いますが、なんらかの違うウイルスが原因だったのでしょうか。

 

 なぜこのような私の経験を書いたかと申しますと、私の経験した状況と同じようなことをおっしゃる患者さんが2人当院へ通院されているからです。お一人は漢方薬で全身状態が整ってきたからか腹満症状も全く認めなくなりましたが、もう一人は私の力が足りないため、まだときどき強烈な腹満感があり難渋しています。他にもこういう状況で困っておられる方がいらっしゃいましたら「葛根湯が効果があるのかも」ということがご参考になれば幸いです。

 

 おまけですが古典落語に「葛根湯医者」というのがあります。「腹が痛い」という患者に「それは腹痛という病である。葛根湯を出そう」。「頭が痛いのです」という患者には「それは頭痛だ。葛根湯を出そう」。付き添いの人にまで「さてそちらの方は。付き添い? では葛根湯を飲みなさい」という具合。どんな病気でも葛根湯を出してしまうヤブ医者の話です。葛根湯は風邪に効果があるのは間違いないですが(もっともすべての風邪に効くわけではありません)、下痢などにも効果がある場合もありますので、葛根湯医者というのはまんざらヤブ医者ではないと思っているのですが・・・。

 

 今回は葛根湯(出す)医者ではなく、葛根湯(飲む)医者のお話でした。

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