寝汗をかく
「寝汗」という言葉をお聞きになられたことがある方も多いかと思います。まさしく「睡眠中の発汗」で、目覚めると止まるものです。ときには「寝汗」のために寝ている間にパジャマを複数回交換される方もいます。
なぜ「寝汗」をかくのかということに対して、西洋医学的には明確な理論はないと思います。一方、東洋医学的に「寝汗」は「陰虚」といわれる病態になっているときに現れる代表的な症状とされています。
生体には「陽」とされる「気」というものと「陰」とされる血液やそれ以外の液体(消化液や体のすみずみにある液状のもの)があり、それらがバランスよく満たされている状態が健全な身体であるとされます。もう少しいいますと、「陽」と「陰」が適度に満たされていても、それらが身体をスムーズに巡っていなければ健全であるとはいえません。そのような中で「陰」が少なくなっている状態を「陰虚」と呼びます。なかなか理解しにくいかもしれません。私自身、東洋医学を学び始めたころにはなかなか「陰虚」を理解しにくかった記憶があります。
「陰虚」のときに現れるその他の症状としては、めまいや不眠、口の中が渇く、手のひらや足の裏が火照る、便が硬くなる(便秘気味になる)などがあります。もしこのような症状がいくつかでもあり、寝汗をかくようなら陰虚の状態である可能性が高くなります。もしそうであったとしても、血液検査やレントゲン写真などには異常を認めないことも多いです。
「陰虚」と判断してすれば、それを改善させるような漢方薬を処方させていただきます。ただ、陰虚に対応する漢方薬の種類があまり多くないことから難渋することもありますが、1年以上毎日夜に2-3回パジャマを着替えていた方が、ほとんど寝汗をかかなくなったというケースもあります。
たとえ寝汗をかかなくても、上記のような「陰虚」による症状がある方は漢方薬を服用されることをご検討されればいいかと考えます。