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新しい薬とインスタントラーメン

[2024.05.21]

 新しい西洋薬が世に出てくることはよくあります。それらは「今まであるお薬と比較して効果が高い」というデータがあるから発売されます。今までのお薬と比べて効果が劣るのに発売されても意味がないですから。既存のお薬に対してデータ上効果があるとされても、現実には「さほど変わらない」と私は感じることも多いです。効果が高いことはデータ上事実だとしても、その薬の副作用はこれまでのお薬より多いこともあります。

 

 科学的には「統計学上、差があるとされれば効果がある」とされますが、その差に大きな意味があると言っていいのでしょうか。例えるなら低金利の現代で「10000円を銀行に預金していて、10年後にそれが10100円になりますから確実に増えます」と言われたときに皆さまはどのようにお感じになられますか。確かに100円増えるのでうれしいことではあるのですが、その喜びはあまり大きくないと思われる方もあるでしょう。預金していて困ることはないかもしれませんが、「10年間はその預金は引き出せません」という制約が付いたらどうでしょうか。「お金が将来わずかでも増えるからいいでしょう」と言われても困る方もいらっしゃることかと思います。

 

 「効果が少し以前のものより強いですが、副作用が出る可能性は少し高くなります」という場合はどのようにお考えになられますか。どのお薬を処方するのかを最終決定するのは我々医師の仕事ですが、処方する際には十分にご相談したいものです。人それぞれお考えが違うわけですから。それと新しい薬は古いお薬に比べて値段は高く、後発品(ジェネリック)があるお薬では、新しく発売されたお薬の値段が10倍以上することもあります。

 お金の話も大事ですが、新しいお薬はいくら発売前に副作用について調べられているとしても、長く飲んだ場合にどうなるかはわからないのが事実です。お薬の種類によっては10年、20年と飲み続ける必要のあるものもあるかと思いますが、そんな長期間発売前に調べられていることはなく、私の印象では長くて1年までと思います。ここが一番大事なことです。新しい薬には長い歴史がありません。

 

 そのような状況ですから、新しく出てきたお薬が発売後何らかの理由で販売停止になったり、販売は続けられるものの従来からあったお薬で「以前からあったお薬でうまくいかない、効果があまりないときのみ使用すること」というように注意喚起されることもあります。結局「昔からあったお薬が良かった」という結論になることもあるのです。そのようなことを考えると私は新しく発売された西洋薬(漢方薬では新しいものは発売されません)をすぐにみなさまに飲んでいただくことに気が引けてしまします。新しいお薬がたくさん使用されている場面に遭遇すると「これでいいのかなあ」とも思ってしまいます。

 

 こんなことを考えていたら、ふとインスタントラーメンと同じではないかと思うようになりました。インスタントラーメンをお食べになられる方ならお判りかもしれませんが、インスタントラーメンも新しい種類がたくさん出てはなくなっています。結局残っているのは以前からある古いものが多いと思います。なぜそうなるかといえば古くから発売されているものがおいしいと思われている方が多いからでしょう。先日お亡くなりになられた浪花のモーツアルトことキダタローさんが作曲された「日清の出前一丁」のCMソングをご存じ方も多いかと思いますが、私はこれが大好きなんです。昔からあるものは今でも美味しく1968年発売開始でした。

 

 

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