発熱したときに解熱剤を飲まれますか?
コロナの流行が終わったような終わっていないような今日この頃です。コロナの流行が始まった当初はコロナウイルスに対する薬というものがないということもあってか、テレビに出ておられるような有名な医師が、「発熱したならば解熱剤を飲んで様子をみて下さい、それでも調子が悪ければ医療機関を受診して下さい」というようなことをおっしゃっていたのを何度か見ました。
そのときに私は「それでいいのかなあ」と疑問に思っていました。私は研修医の頃から、「発熱したときに解熱剤を使うと熱が下がってしまい、本来の病気の状態がわからなくなるので解熱剤は使わないように」というふうに教育されました。一方でその後「人間の持っている免疫力は体温が高いときの方が強い」という事実を知りました。このことは今年の8月に開催された和漢医薬学会でも議論されたようで、その会で千葉大学名誉教授の巽浩一郎先生が「ウイルスに感染したとき、生体は発熱によってウイルスの増殖を抑制するため、解熱剤で安易に熱を下げると、免疫反応を抑制して感染からの回復を遅らせることになる」と発言されています。すなわち発熱は本来人間が持っている生体防御反応なのです。
特効薬がなければ、頼れるのは自分の免疫力になると思います。効果のあるお薬がある病気でも、薬以上に自らの免疫力が大事だと考えます。ですから頼みの綱の免疫力を解熱剤で弱めてしまっては本末転倒だと思います。コロナだけでなく、インフルエンザをはじめとする感染症全般にこのことが当てはまります。確かに解熱剤で熱が一時的に下がったときには楽になったように感じるかもしれませんが、その後薬の効果が切れて再び熱が上がってくるときにはしんどいもので、熱が下がったからといって病気が治ったわけではありませんし。
もっとも41℃を超えるような高熱の場合などは状況が変わるかもしれませんが、そのようなケースに遭遇することは現在の私の立場ではほぼないと思われます。
乳児をはじめとする小さい子供たちは発熱に対しての備えが未熟であり、薬物によって急に解熱することに慣れていないこともあり特に注意が必要です。また小児では「熱性けいれん」といわれる発熱時にけいれんする場合もときにありますが、解熱剤がけいれんを起こさないようにする効果はありません。
一方で私は15年以上前頃から漢方薬をお出しするようになりました。なぜならば前にもお話させていただいた通り「効果がある」からです。そのような中である種の漢方薬には薬を飲むことで一時的に体温を上げて早く病気を治そうとする効果があることを知りました。「体温を上げると免疫力が上がる」ということを昔の人は知っていたのでしょうか。昔の人の知恵には驚くばかりです。
このような理由で私は発熱している方(コロナやインフルエンザ、その他の病気で)に解熱剤をお出しすることは原則しません。患者さんが希望されればお出しすることがないわけではないですが、最近では希望をされることもなくお出ししたことがありません。それがみなさまが早くお元気になっていただくために大事なことだと考えています。
コロナやインフルエンザなどの感染症にときにかかってしまうのは仕方がないことです。そのときでも慌てることなく適切な対処をしていただければと思います。