「間質性膀胱炎」という病気をご存じでしょうか。下記の患者さんに出会う前の私は知らなかった病気です。

難病情報センターのホームページより引用させていただくと

間質性膀胱炎（ハンナ型）とは、膀胱に原因不明の 炎症 がおこり、それによって尿が近い、膀胱や尿道に違和感や痛みがおこる、などのつらい症状がでる病気です。膀胱の内視鏡ではハンナ病変と呼ばれる特有の粘膜の異常がみられます。

となっています。難病に指定されているので困った病気であることは間違いないと思います。

 

　いまから数年前に７０歳代の女性が「間質性膀胱炎」と診断され治療されているという状況で来院されました。困っているのは、「おしっこが貯まると膀胱が痛くてたまらない」ということでした。貯まるといってもそれほど多量ではなく100ccぐらいでも痛んだそうです。一般的には膀胱は300-400ccの尿を貯めることができるとされており、150-200ccぐらい貯まると尿意を感じるとされています。ですが、この方は100ccぐらいで痛みのために排尿されていました。そのために排尿回数が極めて多かったです。膀胱に水を入れて拡張させるという治療を定期的に受けられていましたが、あまり改善はみられませんでした。

 

　そのような方が当院を受診されました。５年以上前でそのときのカルテが残っていませんのでその当時のことの詳しいことはわかりませんが、膀胱の痛みとともに頑固な便秘がありました。膀胱のことは私が詳しく診察させていただくこともできませんし、治療方法もわからなかったので積極的には何もしませんでしたというかできませんでした。

 

　一方便秘に対しては何とかして差し上げることはできそうでしたので、漢方薬を処方して経過を診ていますと徐々に排便はスムーズになり、薬の種類や量は時々変更しながらも快便といわれる状況を継続することができました。

 

　この度転居されることになり、その方から「間質性膀胱炎の痛みが無くなったのが本当に良かった」と言っていただきました。お恥ずかしいお話ですが、「間質性膀胱炎は私にとってどうすることもできない病気」と考えており、「膀胱の痛みは変わりません」と言われるのが怖かったので、積極的にはお聴きすることもしていませんでした。「膀胱の痛み」が消失したことは幸いでしたが、「私にはどうしようもない病気」と決めつけていたことを反省した次第です。

 

　この方にお出ししていた漢方薬が「間質性膀胱炎」を治したということではなく、便通が普通のお身体に戻すことができた結果、ご自身の自然治癒力で「間質性膀胱炎」が改善したということだと思います。