「目は口ほどにものを言う」ではなくて「舌は口ほどにものを言う」
「目は口ほどにものを言う」という言葉があります。調べてみますと「目は口以上にその人の感情を表す」という意味のことわざで、口では肯定的なことを言っていたとしても、相手の仕草や目つきからなんとなく本心でないことが感じられることもあったりしてこのように、目つきや眼差しが雄弁にその人の感情を物語っている様子を、「目は口ほどに物を言う」というそうです。
一方、漢方薬を処方させていただくときに「舌診」というとても大事な診察法があります。「舌診」とは文字通り「舌を診る」ということです。舌を出していただくだけですので、服を脱いだりする必要もありませんので、簡単に行うことができます。
それでは舌を診て何がわかるのでしょうか。
①色;舌そのものの色が赤いのか、紫色っぽいのか、それとも白っぽいのか
②形;大きいのか、小さいのか、ぶよぶよした感じで、縁が波打った感じになっているのか
③苔;苔が付いているのか、付いていないのか、付いているとしたら白い色の苔が付いているのか、黄色い色か、茶色や黒色 の苔か
④舌下静脈(舌を裏返したときに見える血管);見えるのか、見えないのか、見えるとしたらそれは太くはっきりと見えるの
か、数珠状にうねうねと見えるのか
など、身体の中の状態を推し量る情報がたくさんあるのです。その結果をもって漢方薬の選択を行うと的確な処方ができる可能性が高くなります。もっともそれ以外に問診であったり、脈を触らせていただく(脈診)、お腹を触らせていただく(腹診)という手法も併せて行わせていただくことはもちろんなのですが。
以前にも書いたことですが、「エアコンの設定が19℃でないと夏は眠れないので、一緒に寝ているご家族はたまらない」という男性が来院されたことがあります。お話を聞く限りでは「どう考えても暑がりの方だ」と思います。その方の舌を診せていただきました。すると色が決して赤くなく、どちらかというと白っぽかったのです。赤っぽい舌が出てくる(暑がりの人に多い)と考えていましたのでとても驚きました。舌を診る限りでは「寒がり」と判断せざるを得ないような感じです。そこで体を温める方向へ導く漢方薬を主体に処方させていただくと、やがてエアコンの設定温度が25-26℃で眠れるようになり、ご家族にとっても良かったという事例がありました。