「漢方は即効性」ですが「副作用がない」というわけではありません。
私が漢方薬に興味を持ちだした時期にある先生が講演をされました。
「漢方は即効性」という題です。「本当かな」と思いました。「昔からあるお薬がすぐに効くわけないだろう。漢方薬は長く飲んでじっくりと効いてくるもんだろう。」と考えていました。
その先生が書かれたご著書の中に「漢方薬をよくわからない人は『芍薬甘草湯』『五苓散』から使いましょう」と書かれていました。なぜならこの二つのお薬は漢方薬についてあまり知識がなくても安心して使える可能性が高いからです。
「芍薬甘草湯」は「こむら返り」に対してで、「五苓散」は「むかつき」にということでした。聞いたことのないお薬の名前でした。今となっては懐かしい思い出です。
こむら返りは長く続けば痛みが続き困ります。私も時々睡眠中や車の運転中に起こることがあります。「芍薬甘草湯」をこむら返りが起こったときに飲むと(できればお湯に溶かして)本当にすぐに効果が出て痛みが解消されます。まさしく即効性です。本当に切羽詰まったときには私はお湯に溶かすこともせず、そのまま薬を口に入れて唾液で溶かすようにして飲むこともあります。
「『五苓散』はむかつき、嘔吐があるときに冷たい水に溶かして、それをスプーンで一口ずつ飲むとむかつきがスーッとなくなる」と書かれていました。決して甘いお薬ではありませんが、「小さな子どもがむかついて嘔吐しているときにはそのようにして飲ませる」とのことでした。不思議とゲーゲー吐いているような子どもでも、このお薬を口元に持っていくと素直に飲んでくれることが多いのも漢方薬の面白いところです。また「初めは嫌がらずに飲んでいた子も嫌がるようになった時点で飲ますのをやめてよい」とのことです。
その当時に、5歳ぐらいの女の子が何度も嘔吐して青白い顔で来院されました。「五苓散」を飲んでもらいました。嫌がらずに飲み、飲んでいるうちに顔色の赤みがどんどん増してきて「ごちそうさま」と言って元気そうに帰っていかれ、とても驚いた記憶があります。「こんなお薬を使わない手はない」と確信した出来事でした。もっとも五苓散を飲んですぐに嘔吐する場合もあります。そのときは嘔吐した後にもう一度「五苓散」を飲んでいただくとむかつきが治まるということも経験します。「嘔吐したからもう無理」とあきらめない方がいいときもあります。
一方で漢方薬にも副作用があります。肝臓がやられたり、肺がやられたりします。それ以外にもあります。それらには細心の注意を払っていて、それらが出現した際にはそのお薬の服用を中止していただくとともに適切な治療を受けていただくようにしています。たとえ漢方薬の効果が出て、それまで困っている症状が改善していてもです。残念ながら漢方薬を中止したために、改善していた症状がまた出現するということもあり「飲み続けたい」という希望の方もありますが、「それは無理」ですのでそのときはまた仕切り直しです。
すべての漢方薬が上記のようにびっくりするぐらい即効性であるとは言いませんが、飲んでいただければ何らかの変化が短時間で出ていることを実感できる例は多数あります。少なくとも「1か月以上にわたり飲まないと効果が出ない」ということはなく、1か月飲んでいただいて、もし変化がないのであれば私の考えが間違っており、お薬の変更をさせていただかなければならないと考えます。また副作用が出ることもありますので注意が必要です。
最後に「漢方は即効性」ですが、「副作用」もあります。