「心因性難聴」という病気
聞こえが悪そうなために耳鼻科を受診されて、「鼓膜の動きが悪いので聴力が落ちている」と指摘され、経過観察をされているという子どもさんにお会いすることがあります。その子たちはいろいろな検査をして、はっきりとした原因が見つからず、「心因性難聴」という診断が付けられていました。
「心因性難聴」という病気は下記のように書かれています。
心因性難聴とは、音を感じる内耳や脳の聴覚野に障害がなく、心理的な要因から引き起こされる難聴のことを指します。具体的には、心理的なストレスが原因となり発症すると考えられており、学童期(6歳~12歳)に多くみられる傾向があります。また男子より女子に多いとされています。難聴の自覚症状がない場合もあり、また、まれに耳鳴りやめまいなどの症状が現れることもあります。(Medical Note より引用)
そのような子どもさんを診察させていただいたときに、東洋医学的に診察させていただいたときに明らかにおかしいところを見つけることができ、その異常を治療することにより難聴が治ったというケースが3例ありました。
このことから「身体のどこが原因で聞こえが悪い」ということを西洋医学的に指摘することは私にはできませんが、すべてではないにしても、一部の子供たちは心因性で耳の聞こえが悪くなっているのではなく、何らかの原因が肉体的な問題を引き起こし難聴になっているのだと考えます。精神的な問題が一番の原因ではないにもかかわらず、そのような診断になっていることは残念です。
追記(2023.5.18)
先日、大きな病院の耳鼻科で「心因性難聴」と診断された小学生低学年の女の子が来院されました。きわめて簡単なチェックを私がしてみますと、片方の耳の聞こえが悪くなっているようでした。本人も「その側の耳が聞こえにくい」と訴えます。私は鼓膜の状態をきっちりと診ることはできませんが、彼女の素振りや言っていることを聴くと「片耳の聞こえが悪くなっている」ことは事実であると感じ、決してこの子が「聞こえが悪くなっていることを演じている」とは思えませんでした。
診察させていただくと脈の打ち方に元気がありません。そのような場合に「小建中湯」というお薬を考えますが、お腹を触らせてもらった感じでは「小建中湯」をお出ししようと考える根拠となるお腹の感じとは全く違っていました。「小建中湯が効果を示すことはないのかなあ」とも思いましたが、一方で偏食がひどいようで、苦いお薬などもってのほかのようです。幸い小建中湯は苦くないので飲んでくれる可能性はあるのではないかと判断し、当院内で試しに飲んでいただこうとしても全く飲んでくれません。「万事休す」かと思いましたが、お母様から「なんとか飲ませてみる」とのお申し出があり、1週間分処方させていただきました。
そうしますと家ではなんとか飲んで下さり、なんとその日から「耳が聞こえる」と言ってくれたそうです。そしてご自身も「続けて飲んでみる」と意思表示してくれたそうでうれしい限りです。この勢いで偏食まで改善できればと考えます。