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足の裏が火照りませんか?(花粉症に関連して)

[2021.10.21]

 ときどき患者さんから「足の裏が火照る」という訴えをお聞きします。以前の私はそのような訴えをお聞きしても、身体の状態がどのようになってそのような症状が出ているのかを全く理解できませんでした。ときには冷えピタシートを足の裏に貼っておられたり、何か冷たいもの(フローリングの床、冷蔵庫のドアなど)に足の裏をくっつけておきたいという気持ちを絶えずお持ちの方もいらっしゃいました。「足の裏だけでなく、手のひらも同じように火照る」と言われる方もおられます。このような方は決して少数ではなく、ときどきお聞きする訴えです。もっとも患者さん自らこのような訴えをされる方が多いというよりは、私がお聞きすると「そうです」とお答えいただく場合が多いのかもしれません。

 

 この状況は漢方医学的には「陰虚」と呼ばれる状態を反映しているとされます。「陰虚」とはどのような状況でしょうか。簡単にいうと「体の中の水分が少なくなった状態」です。身体には「陽」とされる「気」というものと、「陰」とされる水のようなものがあり、それらのバランスが整っているのが健全な身体とされます。しかし「陰」といわれる冷たいものが身体から少なくなると、相対的に「陽」といわれる温かいものが多くなり、そのため足の裏などが火照ると考えられています。私にはなぜ足の裏、手のひらが火照り、手足の甲が火照らないのかはわかりません。それでは水分摂取を増やせばいいかと言えば、それだけではうまくいかない場合が多いです。

 

 「陰虚」といわれる状況ではその他、めまいや不眠、便秘、口が乾くなどの症状が現れることもあります。現代人には比較的多い状況と考えられ、結果花粉症に悩まされている方もあるようです。

 

 花粉症は今や春先には当たり前のように話題になりますが、このように患者さんが増えた理由に「陰虚」の方が増えているからと考えれば話が合うのかもしれません。この頃では花粉症に対して一部では「舌下療法」といわれる治療も行われ、花粉に対して反応しにくくなるお身体に変えようとされていますが、多くは花粉の飛んでいる時期だけ(ときには飛び出す前から)お薬を飲み、その症状を抑えるという対症療法になっている場合が多いと思います。これでは残念ながら次のシーズンも同じようになることは容易に想像できます。

 

 多分多くの方は生まれてからすぐに花粉症になったのではなく、いつの頃からか花粉症に悩まされるようになったはずです。そうであるならば、その間に花粉に反応してしまうお身体に変わったはずなので、元の花粉に反応しないお身体に戻して差し上げればいいわけです。もし「陰虚」なっていることが原因ならば、「陰虚」を改善させればいいのです。それができるのが漢方薬です。

 

 花粉症の際によく処方される漢方薬に「小青龍湯」があります。確かに鼻水、鼻づまりなどを短時間で解消させてくれる良いお薬だと思います。しかし小青龍湯が効果を示さない例もあり、また残念ながら小青竜湯は対症療法の中に入り、「陰虚」の体質を改善するものではありません。

 

 毎年のように春先の花粉症に悩まされていた患者さんの「陰虚」を改善させることができたときには、その患者さんが「今年は花粉が飛んでいるの?」と言われたことをお伝えして終わりにしたいと思います。

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