「なぜ、そのようになっているのかわかりません。でも、ここはおかしいです。そこを治すとなんとかなるかもしれません。」(漢方薬を中心として自然治癒力に助けてもらう治療法の可能性)
いろいろな訴えをお持ちの方が来院されます。困っておられることは重々理解できます。ですから「なんとかしてあげれれば」と思います。でも、なぜそのようなことが起こっているのかがさっぱりわからず頭をかかえてしまうこともあります。
そのようなときでも、日頃と同じように漢方医学的に診察させていただきます。具体的には脈診(左右の手首のところの脈の様子をみる)、舌診(舌の様子をみる)、腹診(お腹を触っていろいろと観察する)を行います。「西洋医学的には異常がない、あってもそれと困っている症状の関連はない」という段階で受診されることが多いので、それ以上の西洋医学的な検査などはほとんど行いません。
そうしますと脈診、舌診、腹診の結果、普通ではないと思われる状態が明らかになることが多いです。こういう状態は少なくとも「正常な身体」ではなく「何らかの異常がある」という判断になります。もともと困られていることに対しての対処方法は解らなくても、これらの普通ではない、脈、舌、腹部の状態を正常に戻す方法は判ることがあります。具体的には漢方薬を中心にいろいろと試みさせていただくのですが。
漢方薬を飲む前の脈、腹部の異常な反応、状態が服用直後に改善されることを経験することは以前お話しした通りです。(全例ではありませんが、7-8割の方は改善されるように思います。舌の状態が急に変わった経験はありません。)
脈や腹部、ゆっくりながらも舌の状態が良くなったとすれば、これは「少なからず普通の人に近づいた」と考えていいのではないかと考えます。漢方薬をお飲みいただき、健康と思われる人と同じような脈、舌、腹部の状態に近づくことができれば、本来人間の持っている自然治癒力で「どうすれば良いかわからない症状」まで改善していただければと願うばかりです。自然治癒力はすばらしいもので、それを使わない手はありません。「自然治癒力さん、お願いします」という感じです。逆にその自然治癒力を落とすようなことを私がしないように努めなくてはならないと肝に銘じているつもりです。
一例として、どういう訴えだったかは忘れましたが、一番困っているとおっしゃっていた症状が改善されたときに「耳鳴り」もなくなったといわれた方がおられました。「耳鳴りは治らないと思っていたので言ってなかった」とのことでしたので、私も「耳鳴りがあったんですか」と驚いて聞き直したものでした。
同様の経験がほかにもありますので、このように「周りから攻める」と言っていいのかわかりませんが、「なぜそのような困った状態になっているのかさっぱりわからない」ときに、少しでも改善していただくようにする一つの手段として考えています。