身体はいろいろなところが助け合って働いていると思います(風が吹けば桶屋が儲かる)
「風が吹けば桶屋が儲かる」という言葉を、その意味合いはわからなくともお聞きになられた方も多いかと思います。
ウィクショナリー(日本語版)から引用させていただきますと
意味としては
何か事が起きると巡り巡って思いがけない意外なところにも影響が出ること。また、当てにならない期待をすること。
なせこのような意味合いとなったかの由来は
風が吹くと土ぼこりがたち、それが目に入ることで盲人が増える。盲人は三味線で生計を立てようとするので三味線の需要が増える。三味線には猫の皮が張られることで猫が減る。猫が減るとねずみが増えて、ねずみにかじられる桶が増えることから、桶を売る桶屋が儲かって喜ぶ。というところから。
私には「回り回って、結果的に桶屋さんが儲かるのだ」と納得できるようなできないような感じです。この言葉を今回持ち出したのは、人間の身体というのもいろいろなところ(臓器など)がそれぞれ勝手に働いているのではなく、それぞれが何らかの関連性を持って動いているということをご説明したいからです。
どこかの部位が困った状態に陥ると、それが「風が吹けば桶屋が儲かる」というように、最初に困った状態になった部位が次にある部位に影響を及ぼし、さらに次、次へと影響し、最後は全然違う部位に困ったことが起こってしまい、あたかもそこだけが悪い状態になっていると考えてしまいがちかもしれません。元々の原因は全然違うところにあるにもかかわらずです。
患者さんは何らかの異常を訴えられているわけですから、私はそれをお聴きして「どうすれば良いか」と考えるのです。でも「桶屋さんが儲かった」のはなぜですかと聞かれたときに、それは「風が吹いたからですよ」と答えるのがとても難しいように、その患者さんの一番困っている症状を引き起こしている原因は「これです」とお答えするのは困難であるケースが実際はほとんどなのかもしれません。
簡単な例をお示ししますと、「動悸がする」と訴える患者さんが来院されたとします。診察させていただくと、脈拍が1分間に100回以上うっています。普通は50-80回ぐらいが正常とされていますので、明らかに心臓が異常に早く打っていることになります。ではこの状態は心臓が悪いと決めつけていいのでしょうか。確かに心臓の病気で脈拍が早くなっていることもあります。が、肺が弱っていて(肺炎、肺癌、気管支喘息など肺の病気)酸素を十分に体に取り込めない状況で、そのために心臓が頑張って全身に酸素を送ろうとするために心臓がいつも以上に早く打つ、つまり脈拍が早くなるという状況が作り出されることもあります。ですからこの場合の脈拍を落ち着けるためには、心臓にアプローチするのではなく、肺の状態を改善させることが大事でそのための治療が必要です。その治療が功を奏したら脈拍は下がります。また睡眠中に何度もおしっこに行くために、睡眠不足になっているために脈拍が早くなってようなケースもあるかもしれません。この方はお分かりのように、ゆっくりと眠れるような状況にすることが一番良い治療になります。
今まで書いていたこと逆のことになるかもしれませんが、どこかが弱ってくると、それをカバーする、補おうとしてほかの部位が頑張るということが身体の中でも常に起こっているはずです。それは一家の大黒柱の方が倒れてしまうと、その他の家族が頑張るというような状況と同じではないでしょうか。いろいろなところが助け合って人間は生き長らえる、ひいては動物としての最大の使命である子孫を残そうとしているのだと思います。
またまた話は少し変わり、血圧が高めの方がたくさんいらっしゃる中で、ほとんどの方が「なぜ血圧が上がっているかその原因を見つけられない」という現実があります。本来なら血圧が異常に上がる原因を突き詰めて、そこを改善することができれば血圧値は自然といい方向へ向かうと考えます。いい方向という表現をしましたのは、血圧は低ければ低いほどいいのではなく適切な値が一人ずつ違うはずで、一律に「降圧剤を飲んで血圧を下げればいい」というのは間違いと思うからです。
1か所にだけに目を向けるののではなく、お身体全体を診て考える必要があります。「木を見て森を見ず」となってはいけないということです。
身体の中はいろいろな臓器があり、さらには臓器と呼ばれないものもたくさんあるだけでなく、目に見えないものもたくさんあるのではないかと考えます。それらが複雑に絡み合って「足の引っ張り合いをすることなく、助け合う」ということを原則に成り立っているはずで、その助け合いの力を上手に引き出し利用し、健康を維持していただけるように考えたいと思います。
*うまく話をまとめられませんでしたがご容赦願います。