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本治と標治(原因療法と対症療法);降圧薬、コレステロール低下薬の意味

[2017.07.26]

 病気になるには、何らかの原因があるはずです。(その原因が判明するかどうかは別ですが)

 

 西洋医学では「原因療法」「対症療法」という言葉がときに使われます。

 

 例えば、インフルエンザにかかって高熱が出る、節々が痛むなどの症状は、インフルエンザビールスがいつの間にか身体に入ってくることにより起こります。この場合はインフルエンザビールスをやっつけることが治療となり、「原因療法」になります。最近ではインフルエンザにかかると、タミフルを代表とする抗インフルエンザ薬を使用することが当たり前のようになっていますが、実はこれらのお薬は、インフルエンザビールスをやっつける効果はありません。体内に入ってきたビールスを今以上に増やさないようにするお薬です。今、身体の中で暴れているビールスをやっつけるのは、あくまで自分の力、免疫といわれるものです。そうなると、タミフルを飲むことは「原因療法」とは言いにくいです。

 

 一方、高熱に対して解熱薬を飲む、咳が出るので咳止めを飲むというのは「対症療法」です。

 

 このように考えると、西洋医学で「原因療法」といわれるものはほとんどないことに気づきます。なぜなら「血圧が上がる」「コレステロール値が高くなる」原因はわかっていないからです。高血圧や高コレステロール血症に対して飲んでいただくお薬も、「血圧が高いから下げる」「コレステロール値が高いから下げる」であって、高血圧になる原因、コレステロール値が上がる原因を治すことはありませんので「対症療法」です。ですから、これらのお薬は「一生飲まなくてはいけません」などと言われるのです。

 

 ガンができたので切除する、おなかが痛くてその原因名虫垂炎(俗に言う盲腸)で切除するというのは「原因療法」になるかと思います。すなわち西洋医学での原因療法は外科的治療のみになるのかもしれません。しかしもう少し深く考えれば、「なぜガンができたのか」ということに対しては何もアプローチできていません。今あるガンを切除できたとしても、次また新たなガンが違うところにできる可能性は否定できません。本来なら、ガンができにくい体質というか状態にまでなっていただけたらいいのですが。

 

 東洋医学、漢方薬の世界では、「原因療法」「対症療法」に対する言葉として、「本治」「標治」という言葉があります。

 

 「本治」とはその病態が起こっている原因そのものを改善させる治療、「標治」とは今起こっている症状を改善させる治療を意味します。

 

 春先に多い花粉症(スギやヒノキ)の方は、鼻水やかゆみで困っておられます。この場合、鼻水を止める、かゆみを抑えるために用いる漢方薬は「標治」をします。一方で、生まれたときから花粉症の方は多分いらっしゃらないと思いますので、それぞれの方は何らかの原因があっていつの間にか花粉に反応してしまうお体になっているわけです。そこで、漢方薬を用いて元のお体に戻そうとするわけですが、これを「本治」といいます。

 

 西洋医学ではこのような発想は現在のところ余りなく、「花粉の飛んでいる時期にはマスクをしましょう」「あまり外に出ないでおきましょう」「その時期には鼻水止めのお薬を飲みましょう」などとなるわけです。

 

 これでは、次の年にも同じように症状が出る可能性は高く寂しい限りで、次のシーズンを暗い気持ちで迎えなくてはなりません。しかし、漢方薬では症状がでないようにする「本治」もときに可能です。

 

 このような考え方でいくと、高血圧になっている原因もあるはずで、その原因を突き止め、その原因を取り除ければ血圧も程よい高さになることが予想されます。一例として、交通事故のあと首が痛み不快な状況が続いているなかで、高血圧を指摘され来院された方がいらっしゃいました。この方には降圧薬をお出しせず、首の痛みをとる漢方薬を処方しましたところ、痛みは消失し血圧も正常まで下がりました。このように血圧を下げるお薬は「標治」をする「降圧薬」だけではなく、この方のように「本治」することのできる漢方薬があるわけです。もっとも、高血圧の方で症状のある方は少なく、そう考えれば「降圧薬」は「標治」していることにはならないかもしれません。

 

 ガンなどの手術は「原因療法」になると書きましたが、よく考えると、ガンができない体にすることが「原因療法」言い換えると「本治」になると思います。

 

 「本治をする」というのは難しいことですが、なんとかできるようにがんばりたいものです。

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