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なぜこんなにもたくさんの方に、漢方薬をお出しするようになったのでしょう

[2024.02.21]

 医師になって40年以上が経過しました。現在私は町医者として仕事をさせていただいており、たくさんの方に漢方薬をお出ししている毎日があります。なぜ漢方薬をたくさんの方にお出するようになったのかをお話しさせていただこうと思います。

 

 昭和の終わりごろに学生生活を送った私ですが、その当時は漢方薬の講義はありませんでした。ですから「漢方薬がどういうもので、どういう効果がある」など全く知らずに医師となりました。もっとも漢方薬という存在は知っていましたが、昔からある薬なんてそれしかなかったから仕方なしに使われていたものであり、どんどん新しい西洋薬が出てきている現代において出番があるとは思ってもいませんでした。そういう考えが根本にあり医師としても仕事を始めたのです。環境は人によって違いがあるかとは思いますが、私が駆け出しの医師として、また少し時間がたって中堅の医師として仕事を病院でしているときにも周りには漢方薬を使用している同僚、先輩はいませんでした。(その時代にもう少し広い心、目を持っていれば漢方薬を使われている医師がいらっしゃったことに気が付いたと思いますが、今のように情報が簡単に得られることもありませんでした。)

 

 そういう中で病院勤務から町医者としての生活が始まりました。そうしますと病院の外来診療をしているときには気づいていなかったのですが、患者さんの訴えはさまざまであることに気づかされました。決して西洋医学的には病名のつかない状況ながら、たいへんみなさまが困っておられるのです。しかし私にはどうして差し上げればいいのか全く分かりません。自分の無力さに失望もしました。

 

 そのような時間がしばらく続きましたが、あるとき「漢方薬」はどうなんだろうと思ったのです。このように思いつく前にもある先輩医師から「漢方薬についてどう思う」と聞かれたことが一度だけありました。そのとき私は「あまり興味がありません」と答えた記憶があります。そのように答えた後、時間がたって自分の現実を顧みますと前にも書きましたが「何もできていない、このままではいけない、何とかしなくてはいけない」と思うようになり漢方薬の勉強を始めました。

 

 何冊かの本を購入して読んだり、講演会に出席してお話を聞いたりしますが、理解できないことも多く、また断片的な知識だけが少し増えるだけでなかなかみなさまに処方させていただけるような段階には進めませんでした。「どうすればいいのか」を少しずつ勉強しながら考えていました。この状態を例えるならば、ジグソーパズルの1ピースに相当する知識を得たような感じで、ピンポイントというか決まった症状に対しての漢方薬の使い方は少しわかりましたが、応用することはなかなかできませんでした。ですから漢方薬を使うことをあきらめかけた時期もありました。

 

 人間の身体というものは複雑にいろいろな部分(臓器や血液その他多数)が絡み合って成り立っています。さらに今では、現代科学でもその存在を証明できないものまであると私は思っています。その最たるものは「気」というものです。人体の中に「気」はあるに違いない、あると考えなければ想定できないような現象がたくさんあると考えています。

 

 そのような人体の中で、ゆがみで出てしまった結果現れた症状に対しては、ピンポイントの漢方薬の知識では到底太刀打ちできません。「なかなか力がつかないなあ」「まとまった知識がつけばいいなあ」と考えている時期に、ある先生の漢方の考え方、使い方の講演DVDの存在を知り購入して勉強してみました。時間はDVD1枚で3時間あり、それが40枚ありました。それを時間のある時に少しずつ見て勉強しました。幸いなことにDVDは居眠りしても、また元に戻って見直すことができます。(講演会ではそうはいきません。) 時間はかかりましたが、その先生の講演の構成内容が素晴らしく、まだまだ不勉強の私でも少しずつ理解することができました。その当時のことを思い出しますと「次はどのようなことを教えていただけるんだろう」とワクワクしてみていた記憶があります。

 

 その40枚のDVDを少なくとも2回は見ました。そうしますと知識が少しずつ合わさってきました。これはジグソーパズルの枠組みが少しできたときと同じような状態だったと思います。こうなると後は、できるだけたくさんのピースを拾っては枠にはめるという感じで知識を増やし、ピースがくっついて塊となったときにはある程度まとまった知識となり現在に至っています。しかし「このジグソーパズルは何ピースあるんだ」と嘆きたくなるぐらいたくさんあります。現在でもパズルとして見たならばはスカスカの状態かもしれません。

 

 今後も少しでもパズルの完成にむかって努力したいと思っています。正直なところ「一生かかってもパズルは完成できない」とも思っているぐらい奥が深いです。しかし漢方薬をみなさまに処方させていただくようになってその効果に驚き、また西洋薬しか使ったことがないときより多くなった「患者さんに喜んでいただける」という経験は何物にも代えがたい貴重なものです。

 

 みなさまからお聴きする訴えを漢方薬を知る前の私ならどのように対処していたのかいくら思い出そうとしてもわからないのです。以前は「ひょっとしてみなさまの訴えを聞こえていないふりをしていたのではないか」と思うとぞっとします、誠に申し訳ないことをしていました。

 

 漢方薬を使いだした頃に、当院のスタッフの調子が悪くなったときに「西洋薬ではなくどの漢方を飲めばいいですか?」と問われるようになり、彼女らたちも「漢方薬の効果を実感しているんだ」と考え「やっていることは間違いではない」と思った記憶があります。そしてなにより漢方薬の材料、原料は自然の中にあるということはある意味とても大事なことで、人工物である西洋薬を処方させていただくより安心感は大きいと考えています。そしてそれを上手に的確に処方するための考え方が2000年ほど前にはおおむね完成していたという事実には驚くばかりです。そんな奥深いものですから習得するのは一生かかっても難しいと思いながら、少しでも知りたいという意欲は誰よりも持っているつもりです。ですから今後もこのままできる限り勉強を続けていこうと思います。

 

 別のところにも書きましたが、患者さんが何気なく言われたことが「漢方医学的に考えれば簡単に理解できる」ということも増えて、外国語を勉強し続けていると、あるときから今まで理解できなかったのが突然聞き取れるようになるというのと似ているように思います。

 

 結論です。なぜこんなにもたくさんの方に漢方薬を処方するようになった理由は

①とても効果があるから

②天然のものを材料にしており、人工物である西洋薬より安心感があるから(けれども副作用が出ることもあります)

③西洋薬では全く対応でいないと思われる困っておられる症状に対して何とかできる場合が増えて、喜んでいただけることが増え、私自身もとてもうれしいから(ただしまだまだ良くなっていただけないときもあります。申し訳ありません。)

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