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出べそ(臍ヘルニア)

[2022.11.25]

 赤ちゃんの「出べそ」について今回はお話ししたいと思います。

 

 赤ちゃんの出べそに対しては、「自然に引っ込むことが多いので放置して様子を見ましょう」とされている時代がありました。(一部でお金を張り付けて様子をみたようなケースもあったようですが) そして残念ながら出べそが治らなかった場合には、しかるべき時期に手術して治すということが一般的であったと思います。もっとも出べそは見栄えの問題があるだけで、そのまま放置しても問題を起こすことはありません。しかし「おへそが出ていること」が気になるような年頃になると手術を受けられることが多いです。実は私の息子も出べそで幼稚園のときに手術を受けました。(その当時は下記の方法を知りませんでした) なぜならおへそが見えると、何回もズボンやパンツをたくし上げて出べそを隠そうとしていたからです。手術時間は15-20分ぐらい無事終了し治りました。もっとも全身麻酔で行われたわけで、麻酔というものには非常に危険が伴います。ですからできれば手術は避けたいと考えます。

 

 その後、お名前は忘れてしまいましたがある小児科の先生から「出べそに対する圧迫療法」というのを教えていただき、見本の圧迫療法に使う材料をお送りいただきました。(お名前を忘れて申し訳ありません)

 

 その方法とは、綿球を出ているおへそのところに押し込んで、皮膚を左右から寄せて綿球が出てこないようにし、その状態で粘着性が強く伸縮性のないテープで貼るという方法です。(さらにその上にお風呂に入ったときに水が入らないように防水フィルムを貼ります) これを1週間に2回ぐらい貼りかえて様子を見ていますと生まれて間もない子供たちの出べそはほぼ確実に治り、手術に至ることはありませんでした。(早ければ3回ぐらいの貼り換えで出べそは治ります) しかし来院された時期が生後2-3か月以降ではこの方法では成功しにくくなると思いますので、早い時期から試みることが必要です。

 

 

 最もこの方法では、粘着性の強いテープを赤ちゃんの軟らかい皮膚に張り続けることになり、その部がかぶれてしまいかわいそうな状態になるという欠点がありました。それに悩んでいた時期に「キズパワーパッド」という商品が世の中に出てきて、これを傷に貼るとかぶれることもなく早く治るということでした。「これだ」と思い、これを綿球を押さえこむために貼ってみました。3日後診てみますと確かにキズパワーパッドを貼ったところの皮膚はかぶれていませんでした。しかし、キズパワーパッドが「びよーん」と伸びて出べそを押さえていた綿球が外へ出ており、圧迫療法にはなっていませんでした。

 

 これは予想外で困りました。この方法では肌には優しいですが、本来の目的を達成できません。「どうすれば良いか」と考えていた時に「そうだ」と思いつきました。キズパワーパッドを、伸縮性のない元々皮膚に張っていたテープで「裏打ち」というか、そのような言葉があるかどうか分かりませんが「表打ち」という感じであらかじめ貼ったうえで、おへそを押さえてみました。

 そうしますと、数日たっても綿球は外へ出てこず出べそは押し込まれたままになっており、当たり前かもしれませんが、キズパワーパッドを貼っていた皮膚もかぶれることなくきれいでした。この方法を思いついた以降は肌荒れにほとんど悩まされることがなくなりました。

 

 先日130人余りの保育園児の検診に行く機会がありましたが、私の主観ですが3-4人の子どもたちが出べそと思われました。この子供たちも今後手術をするとなると少なからずの危険性がありますので、一人でもこのような方法で手術を回避できるのならばいいかと思います。(残念ながらその子供たちには時期が遅いためにこの方法ではだめですが)

 

 最後に、これまでの経験で一番大きな出べそが改善できた例をお示しします。

                                 

                                                                   

追記(2023.3.1)

 臍ヘルニアに対する専門の先生へのインタビュー記事(ドクターサロン vol.67 2023年2月号)を最近読みました。それによりますと、「臍ヘルニアは自然治癒が1歳までに8割、2歳までに9割」と書かれていました。言い換えれば、1割は放置していては治らないということになります。1割の子供たちが全身麻酔での手術を幼少時に受けるかもしれない、命には関係ない問題で、見栄えだけで手術を受けるというのは、手術中に何か起こらなければいいですが少々心配です。手術を受ける可能性を少しでも減らすことにこの方法が寄与できれば幸いです。

 

追記(2023.3.20)

 今年の1月下旬に、生後1か月過ぎの女の子が来院されました。1か月検診で「出べそ」を指摘され、どこか出べそに対応してくれる医療機関をさがすように指示されたために来院されました。生後すぐは、初めて来院されたときの状態ほど出べそは大きくなかったようですが、初めて診せていただきたときには今までみたことのないような形、大きさで少々びっくりしました。

 

 これまでと同じ方法でうまくいくのか分かりませんが、とりあえずやってみることとしました。そうしますと、おへそが飛び出ている原因となっている「ヘルニア門」というところが私の経験上ですが狭い感じがして、その奥におへそを押し込むことが大変でした。(後で考えるに、そこが狭いためにあのような球に近いような形状の出べそになっていたのかもしれません) しかし何とか奥へ押し込むことができ、押し込んだあといつものように綿球を押し当て、皮膚を寄せてテープで固定しました。テープを張っているところの清潔を保つために週2回、テープを外して入浴した後に来院していただき張り替えるということを繰り返し行った結果、2か月かからずに、ご両親が満足していただけるようなおへその状態になりました。最後の方は「時間との勝負」という感じでしたが、うまくいきよかったです。 

1月27日 1月31日 2月7日 2月18日

 

2月28日 3月11日 3月15日 3月18日

 

1月27日 1月31日 2月7日 2月18日

 

2月28日  3月11日 3月15日 3月18日

追記(2023.7.22)

 綿球で圧迫する方法をお教えいただいた先生のお名前がわかりました。広島の小児科医 原三千丸先生でした。この場をお借りしてお礼申し上げます。

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