血圧のお薬は一生飲まなくてはいけない?
高血圧のお薬は「一生飲まなくてはいけない」と言われていると思います。私も以前はそのように患者さんにご説明していました。しかし最近では、ある程度血圧が下がっていて安定していると判断した場合、降圧薬を減らすようにして下がりすぎるのを防ごうとしています。結果血圧のお薬を中止できる方も何人か出てきました。
降圧剤を単に中止するだけのこともありますが、一方で日々の不調に思っている、感じていることを改善できるように漢方薬を併せてお出ししてる場合がほとんどです。その結果「快眠、快便、快食」になっていただければ血圧も安定してこられることも多いです。
降圧剤を中止すると血圧が上がってこられる方ももちろんありますが、様子を見ていると中止してから時間が経てば経つほど血圧が下がってこられる方もいます。患者さんが自ら「前は血圧が高くてお薬を飲んでいたけれど、このごろは飲まなくても血圧がどんどん下がってきますね」と言われることもあるのです。
これはどういうことかと考えますと西洋医学的に血圧は、心拍出量(心臓から押し出される血液量)と末梢血管抵抗(血管の硬さ)で決まるとされています。(それ以外の要素もありますが) 動脈硬化が進むと末梢血管抵抗が大きくなるので血圧は上昇傾向かもしれませんが、一方の心拍出量は加齢とともに低下するように思います。ということは高齢になれば血圧は低下傾向になってもいいのかもしれません。
「元気が出ない、なんとなくしんどい」といわれる方が血圧のお薬を中止して元気が戻られる方もあります。
このような経験から、漫然と同じお薬を飲み続けるのではなく降圧剤を見直すこともときには必要で、「血圧のお薬は一生飲まなくてはいけない」と決めつけてしまうのは間違いだと考えるようになりました。
追記(2024.10.28)
精神科医師である神田橋條先生のご著書のまえがきにこのように書かれていました。
最近の精神科の治療・援助は、薬物投与が大半となり、「治癒して患者ではなくなる未来」を断念させる、終わりなき従属、医療の囚人を作る営みになっているように見えます。
これを読んで思わず「うーん」と考えさせられました。「血圧のお薬を飲み続けないとまた血圧が上がるので、一生飲み続けてください」は上記と同じなのかもしれません。