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「疾患に対する院長の独り言」

起立性調節障害(五月病)(2022.05.18更新)

 「起立性調節障害」という病気をご存じですか。日本小児心身医学会のホームページから以下引用させていただきます。

 

起立性調節障害(OD)

1.概要

  • たちくらみ、失神、朝起き不良、倦怠感、動悸、頭痛などの症状を伴い、思春期に好発する自律神経機能不全の一つです。
  • 過去には思春期の一時的な生理的変化であり身体的、社会的に予後は良いとされていましたが、近年の研究によって重症ODでは自律神経による循環調節(とくに上半身、脳への血流低下)が障害され日常生活が著しく損なわれ、長期に及ぶ不登校状態やひきこもりを起こし、学校生活やその後の社会復帰に大きな支障となることが明らかになりました。
  • 発症の早期から重症度に応じた適切な治療と家庭生活や学校生活における環境調整を行い、適正な対応を行うことが不可欠です。

2.疫学

有病率 軽症例を含めると、小学生の約5%、中学生の約10%。重症は約1%。不登校の約3-4割にODを併存する
性差 男:女 1:1.5~2
好発年齢 10~16歳
遺伝・家族性 約半数に遺伝傾向を認める

 

3.成因

1)起立に伴う循環動態の変動に対する自律神経による代償機構の破綻

2)過少あるいは過剰な交感神経活動

3)水分の摂取不足

4)心理社会的ストレス(学校ストレスや家庭ストレス)が関与する。身体が辛いのに登校しなければならないという圧迫感が、さらに病状を悪化させる

5)日常の活動量低下→ 筋力低下と自律神経機能悪化→ 下半身への過剰な血液移動→ 脳血流低下→ 活動量低下というdeconditioningが形成されるとさらに増悪

4.一般的にみられる症状

  • 立ちくらみ、朝起床困難、気分不良、失神や失神様症状、頭痛など。症状は午前中に強く午後には軽減する傾向があります。
  • 症状は立位や座位で増強し、臥位にて軽減します。
  • 夜になると元気になり、スマホやテレビを楽しむことができるようになります。しかし重症では臥位でも倦怠感が強く起き上がれないこともあります。
  • 夜に目がさえて寝られず、起床時刻が遅くなり、悪化すると昼夜逆転生活になることもあります。

   以上 引用終わり

 

 この記事の有病率をみると、たくさんの子どもたちがこの病気で苦しんでいて、不登校になっている子供たちもいるようです。「『さぼり』と決めつけず、病気であることを認識してあげて下さい」と書かれているようなサイトも目にします。

 

 当院にも朝起きられず学校へ行けない、遅刻するというような訴えで来院される方がときにあります。「頭痛がする、何をする気にもなれない、元気がない」というような訴えの時もあります。このようなときに「起立性調節障害」という診断をされる例があるようです。一方で多くの場合、血液検査や画像検査で異常は認められませんが、血圧が低めであったり、体温が低いことがよくあります。それをそういう体質だと簡単に考えるのではなく、血圧は低くならないように(せめて100mmHg以上)、体温は36度台になっていただくようにしたいと思っています。西洋薬で血圧を上げようとするお薬が処方されることもあるようですが、これを飲むと頭痛がしたり、気分が悪くなったりする例もあるようですし、なによりあまり効果がなく状態が改善しないことが多いです。

 

 半年前ぐらいに、小学校6年生の女の子が来院されました。1年前ぐらいより、耳鳴り、ふらつき、低血圧があり、朝起きにくく、学校も遅刻気味とのことでした。お見受けしたところ色白で、少し活気がないような感じでした。これまで「起立性調節障害」と診断され、ある種のお薬(西洋薬)を処方されていたそうですが、症状は改善しなかったそうでした。

 

 便通についてお尋ねすると1日に2-3回出るようですが、トイレには長くこもっているとのことです。こういう状態は便秘ではないですが快便ではないと考えています。この症例のようにトイレに長くこもる必要があるのは、便意があるもすっと排便できない、便を出す元気さが足りないためと思います。そのためか1回に出す便の量も少なく、結果1日に何回かに分けて出さなくてはいけないことになっているのです。1日に2-3回出ているので便通は問題ないと判断するのは間違いです。

 

 その女の子を脈診といわれる漢方医学では大事とされる診察方法で診てみますと、脈の打ち方がとても弱く、このことは簡単にいうと私は「身体に元気がない」と判断しています。ですから学校へ行くことや、朝普通に起きることが難しくなると思っています。この元気のなさは、血液検査やレントゲン検査などの画像で異常としてとらえられることはありません。それだけに西洋医学的にはとらえにくい状態であると思います。しかし、注意深く脈を触ると明らかに元気な人とは違うのです。こういう場合私は患者さんご本人に脈を触っていただき(触っていただくポイントにマジックで印をつけて)脈の打ち方を感じていただきます、と言っても「脈が打っているのがわからない」ことを認識していただくのですが。このような状態で、漢方薬をお飲みいただき、その直後に改めて脈が触れるかどうか確かめていただきますと、多くの場合マジックで印を付けた個所で、トントンと脈打つのが分かるようになっています。本当に不思議ですが、お薬を飲まれて直後でも脈が元気にトントン打ち出すのです。(残念ながら全例ではありませんが、多くの場合には変化がみられます)

 

 この子は何種類かの漢方薬を処方することにより無事小学校を卒業し、中学校も休まず登校しクラブ活動も元気にしています。なんとかして体調を改善させ、「さぼりではなく、学校へ行きたいと思っているのに行けない子供さんたちが少なくなればいいなあ」と思っています。

 

 以前の記事「不登校、起立性低血圧(解離性人格障害)と糖質制限食」も併せてお読みいただければ幸いです。

 

追記(2022.5.20)

 GW明けに、小学生のころにはいわゆる五月病と言われる状態になったことがあったようですが、今年はそのようなこともなく普通に学校生活を送ることができているようで安心しました。

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