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反復性耳下腺炎

[2023.07.03]

 「おたふくかぜ」という病気をお聞きになられた方はたくさんいらっしゃると思います。中には罹患したことがある方もおられるでしょう。正式には「流行性耳下腺炎」といいます。ムンプスウイルスに感染して発症します。一度感染すると生涯の免疫が獲得されるとされ、一生で1回しかかからないと考えられています。以前は集団生活を始めた保育園児、幼稚園児に発症流行することが多かったですが、最近ではおたふくかぜの予防接種を小さいときに受けられている方もあり、大きな流行はないと思います。一方で成人になってから初めてかかる方もおられます。

 

 「おたふくかぜ」は唾液を作る耳下腺、顎下腺、舌下腺という器官が腫れる病気です。特に左右の耳の下にある耳下腺が腫れることが多く、見た感じが「おたふくさん」のようになることから「おたふくかぜ」と呼ばれるようです。両側が腫れることが多いですが、片方のこともあります。顎の下にある顎下腺も同時に、もしくは少し時間をあけて腫れる場合もあります。

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 一方発熱もなく、「耳の下(時には後ろ)が腫れてきて痛い、おたふくかぜ? 以前にも同じようになったんだけど」という子供に出会うことがあります。一見おたふくかぜです。しかし、顎の下の顎下腺が腫れていることはありません。おたふくかぜワクチンをしているという場合もあります。ときには血液検査で、おたふくかぜには罹らないぐらい十分な免疫があることを確認した子供さんでもこのようなことになることがあります。このような場合に「反復性耳下腺炎」という診断になると思います。

 

 「反復性耳下腺炎」の発症原因ははっきりわかっていません。しかし幸いなことに数日で軽快することが多く、合併症も特にありません。一方おたふくかぜには昔から「不妊になることがある」といわれておりましたが、それ以上に「難聴(耳の聞こえが悪くなる)」ということの方が問題になることがあります。もし難聴になれば回復が難しいとされています。

 

 

 この「反復性耳下腺炎」と診断してもいいと思われる小児が来院されることがあります。見た感じでは「おたふくかぜ」と似ています。問診で「以前も同じようなことがありました」「おたふくかぜには罹りました」とか「ワクチンはしています」というお話などをお聞きすると、これは「反復性耳下腺炎」ではないかと考えます。

 

 その際私は、足のある部分を棒などでゴリゴリと押して刺激してみます。これは「遠絡療法」といい、台湾人の柯尚志(こう しょうし)医師により開発された療法です。耳の周囲にも「経絡」といわれる「気」が流れる道があります。(あるはずです?) 「遠絡療法」とは、問題の起こっている場所とは違う離れた部位を刺激することにより主に痛みを改善させることができる療法です。

 

 

 上図のように「経絡」があると東洋医学では考えられています。現代科学でこういうものがあるのか現在のところ解明されていませんので、あくまで架空の話かもしれませんが、私は「ある」と思っています。それは患者さんの訴えが、この経絡という道に沿って不調がある、痛むなどと言われる方に多々お会いすることもその理由です。また、遠絡療法というものの効果を実感するにあたり、「経絡」というものの存在を認めざるを得ないと思っています。

 

 その効果の一部である「反復性耳下腺炎」といわれるだろう症例に対しての「遠絡療法」の効果について以下お話しします。

 

 

 耳の周囲には何本かの経絡が通っており、腫れている部分がどの経絡かを判断します。多くは「三焦経(さんしょうけい)」といわれる経絡が通っている部分が腫れています。腫れているというのは「気」がその場所で滞っている、詰まっていると考え、その部分の気の巡りをよくするために、腫れているところの逆の足の内側を棒などでゴリゴリと3秒ぐらい刺激します。(右が腫れていたら左足、左が腫れていたら右足) そうしますと、すぐさま耳下腺炎と思われた腫れが小さくなるという経験を少なくとも10例は経験しています。痛みも軽減することが多いです。ですから私は「反復性耳下腺炎」といわれるものは、気の巡りが停滞した部分が腫れている状況ではないかと考えています。耳の下付近は気の巡りが滞りやすい場所でかつそれが目につきやすいところなので、発見されやすくなっているのではないでしょうか。

 

 よく「肩がキンキンに硬くなって痛む」というような方もおられます。これも気の巡りがその部に滞って硬くなり痛んでいると考えています。そのような場合も肩ではなく、離れた手足の部分をゴリゴリと棒で刺激すると肩こりがとれることは何回も経験しています。ゴリゴリと刺激するときには痛みが伴いますが、短時間ですし大きな問題はありません。

 

 反復性耳下腺炎をよく起こす子供たちは、日頃から気の巡りに問題を抱えている可能性があるのかと思います。そういう状態は反復性耳下腺炎だけでなくほかの病気にも罹患しやすいかもしれませんし、気づかないままで日常生活に問題を起こしている場合もあるかもしれません。

 

 まだ反復性耳下腺炎が改善したという症例の写真を撮影させていただいたことはありません。ちょっとケースが違いますが片方の首筋が大きく腫れて痛んでいる方が来院された際にその部を超音波で確認したところ、しこりのようなものが見えました。そこで遠絡療法により離れた部位を棒でゴリゴリした途端、超音波で見えたしこりが小さくなった症例の写真をご紹介して終わりにしたいと思います。

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